どのように,この教材を使ったらよいのか,悩んでいる方が多いと思います.中国人の先生も,どのように扱ったらよいか悩んでいる方がいるようです.そこで,中国人の先生へのニューズレター『吉林省中高校日本語教育通信3号』では,教科書の“会話”の指導例を特集しました.ここでは,ニューズレターから記事を抜粋し,会話の指導例を紹介したいと思います.
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会 話 の 指 導 例
編集:中新井(教育学院),加藤(八中),辻(朝中),管理人(11中)
教科書にある“会話”の指導例を紹介します.1冊目の16課を例に見てみましょう.
授業の前に
1.課で勉強する会話の機能は何か考える.
※"会話の機能"とは,「依頼,許可,提言…」等,会話中での役割のことです.16課で勉強する"会話の機能"は,なんでしょうか.それをまず調べましょう.
調べる方法は…
@「会話の練習」を見てみる(練習2やロールプレイ).
A巻末のコミュニケーション一覧を見てみる.
2.本文の中で,ポイントの文を見つける.
→この課の習得目標である会話の機能を用いた文は?
3.会話が発生した状況を考えてみる.
→いつ?どこで?どんな時に?目的は?
4.会話の流れを考える.
第16課を例に見ると,この課で勉強させたいのは,機能「許可とその応答」だと分かりました.これを中心に授業の教案を書きます. |
注釈
1.練習2は「〜てもよろしいですか」の練習.練習3は,「〜お願いする」のロールプレイです.巻末(第1冊272頁)の一覧を見ると,16かは「請求和応答」と書いてあります.
→この課で勉強する会話の機能は「許可を求める/その応答」だと分かります.
2.本文を見てみると…
周明:先生のワープロ,明日の夕方まで借りてもよろしいですか.
水谷:はい,いいですよ.
3.職員室のようです.休み時間でしょうか…などが分かりますよね!
4.16課の会話の流れ.
周明さんが水谷先生を訪れる.学校新聞を作るので,先生のワープロを借りたい.先生は貸してもいいと言う.
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“会話”の教案例
第1冊第16課「会話」 |
1年 ×組 |
3時間目10:10~10:55(45分) |
人数 60人 |
≪目標≫ ・「許可と,その応答」の表現を使えるようになる. |
≪ポイント文≫ "〜てもよろしいですか" |
時間 |
授業の流れ |
注釈 |
0-2 |
1.新出単語の意味確認 |
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2-5 |
2.教科書を見ないで,会話文のテープを聞く.
聞いた後,教師が生徒に本文に関する質問をする.
質問例:周明さんは,何がしたいですか?
水谷先生は,ワープロを貸しますか?
いつまでワープロをかりますか? |
2.みなさんは,どのようにテープをつかっていますか?本を見ないでテープを聞かせると,聞き取りの練習にもなりますよ! |
5-7 |
3.教科書を開いて,会話文を見ながらテープを聞く. |
3.生徒に教科書を見ながら内容を確認させましょう. |
7-15 |
4.右の頁にある解説をする.
※この課の習得目標を中心に解説します. |
4.この課では,「請求和応答」を説明している,解説1と2を詳しく説明します.解説3,4,5は会話文の説明ですから,簡単に説明するだけでいいです. |
15-18 |
5.本文を教師かテープについて,生徒に読ませる. |
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18-21 |
6.本文の内容を生徒が理解しているか,もう一度確認する.
質問を日本語で生徒にする.
質問例:周明さんは何を借りたいですか.
ワープロを何のために使いますか 等. |
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21-36 |
7.会話の練習2や教師が自分で用意した練習をする.
@最初は単純な代入練習で,口慣らしをさせる.
を借りてもよろしいですか.
※教師が 部分を口頭で言ったり,実物を使ったり,生徒に自由に言わせる.
A次に代入部分を拡大し,会話を応用させていきます. てもよろしいですか.
例:教師:窓を開けたいです(絵や口頭,動作).
→生徒:窓を開けてもよろしいですか.
教師が与える文の例:質問したいです.座りたいです等
B今度は,応答も含めて,代入練習をします.
A;すみません,ちょっと…
B;はい,なんでしょうか.
A; てもよろしいですか.
B;Yes →ええ,いいですよ.
No →ちょっと・・・
例:(教師は生徒を二人指名します.)
教師:Aさんは,暑いです.Bさんと会話の練習をしてください.
生徒A;すいみません,ちょっと・・
生徒B;はい,なんでしょうか.
生徒A;窓をあけてもよろしいですか.
生徒B;Yes→ええ,いいですよ
No→今風が強いので開けないで下さい.
生徒AとB;(自由に会話をさせる)
他の例:寒いです,のどが渇きました等 |
7.いよいよ会話の練習です.生徒には,徐々に応用練習をさせていきます.(“段落を追った練習”について詳しくは次号以降で紹介します.) |
36-45 |
8.練習3ロールプレイ
※課の習得目標に合ったロールプレイをさせる.
例:登場人物―先生と生徒
場面:生徒は,小さな辞書しか持っていない.
先生の大きな辞書を使って調べたいので借りる. |
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※注;練習について※
自然な会話は,いつも何かの目的があって始まるものですよね.教師が,勝手に生徒に言わせる内容を決めて生徒に言わせても,ただの繰り返しです.しかし,教師が状況を提示する(この場合だと"暑い"という状況)ことで,学生はこの状況なら自分はどんなことを言うだろうか?と自分で考えて話すでしょう.状況を提示して生徒に会話をさせることは,生徒が自分で考えて発話する練習になります.
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以上が,記事の一部です.“会話”を使う上で,問題だと思われる点がいくつかあります.それは,別の頁にまとめてみました.是非こちらもご覧ください 「問題だと思うコト」
他にも,もっといい方法やアイディアがあるはずです.教案を公開してもいいよ!という方,メールでぜひ教えてください!(
編集員一同)
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