会話の指導例(1)に続き,ここでは1冊目の18課を例に練習の仕方を考えてみます.ニュースレター『吉林省中高校日本語教育通信5号』から記事を抜粋ています.
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
会 話 の 指 導 例 〜練習編〜
編集:中新井(教育学院),小林(第一外国語),加藤(八中),辻(朝中),管理人(11中)
教科書にある“会話”の指導例を紹介します.1冊目の18課を例に見てみましょう.
≪18課のポイント≫ 依頼の表現
≪目標≫ 依頼とその応答の表現が使えるようになる
≪ポイント文≫ “もしよかったら 〜ていただけませんか”
授業前半の20分を使って教科書の内容を確認し,以下のような晩所がされた状態からの練習例を見ていきましょう.
【板書例】
依頼と答え
A: 実は、 んです。
それで、もしよかったら ていただけませんか。
|
▼―――――――――――――――――――▼
B: (はい)いいですよ。 B: (いいえ)ちょっと んです。
ちょっと ので/から。
A: ありがとうございます。
A:そうですか。 |
※ 練習までの授業の流れは、会話の指導例(1)を参照にしてください。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
“会話”コーナーの練習例
第1冊第18課「会話」 |
1年 ×組 |
3時間目10:10~10:55(45分) |
人数 60人 |
≪目標≫ 依頼とその応答の表現が使えるようになる |
≪ポイント文≫ “もしよかったら 〜ていただけませんか” |
時間 |
授業の流れ |
注釈 |
0-20 |
省略
|
|
20-22 |
段階1.代入練習
最初は単純な代入練習で、口慣らしをさせる。
もしよかったら ていただけませんか。
※教師が 部分を口頭で言い、生徒が代入して答える。
例)
T:教えます → S:もしよかったら 教え ていただけませんか。
T:直します → S:もしよかったら 直し ていただけませんか。
動詞の例)
貸します、歌います、見ます、書きます、連れて行きます |
ここで代入させる言葉は段階2や段階3の練習で使えるものにします。この課の依頼表現では“もしよかったら“があるため簡単な依頼には使えません。
←後の練習で使えるものを!!
|
22-30 |
段階2.場面提示をした練習
板書を参考に 「どうして依頼するのか理由を述べて、そして、依頼する」練習をする。
実は、 んです。それで、
もしよかったら ていただけませんか。
※ 教師が場面を日本語(口頭)で提示し、生徒が 部分を考えて答える。
例)
T:日本語のスピーチの発表があります。(@)
→S:実は 日本語のスピーチの発表がある んです。
それで、もしよかったら原稿を見 /発音を直し
ていただけませんか。
場面の例)
A日本の歌が歌いたいです。B日本料理を食べたいです。
Cこの町で一番大きな本屋へ行きたいです。 |
絵を使って場面を提示した場合↓
例えば,教壇に生徒が立っていて,周りの生徒がそれを見ている絵を用意します。
スピーチだと思う人もいれば,歌を歌っていると思う人も、それ以外のことを考えた人もいるでしょう。絵を使うことで、ひとつの提示で生徒から複数の表現を引き出すことができます。 |
30-40 |
段階3.応答も含めた練習
@次は応答も含めて練習します。
段階2の練習で生徒に与えた場面提示の文を、ここでは生徒の母語で提示(口頭)、または、簡単にすべての場面を板書します。
生徒は提示された場面の中から、2人1組でひとつの場面を選び、板書のAとBの会話例に従って練習します。
Bは受け入れ(はい)、断り(いいえ)、両方の練習をするように指示しましょう。
A:実は 日本語のスピーチの発表がある んです。
それで、もしよかったら 原稿を見 / 発音を直し
ていただけませんか。
|
▼――――――――――――――――――――▼
B:(はい)いいですよ。 B:(いいえ)ちょっと 時間がない んです。
A:ありがとうございます。
ちょっと ので/から。
A:そうですか。
A2人1組で練習ができたら発表させてみましょう。 |
段階2で絵を使った場合には、その絵を黒板に貼って場面を提示し、絵をみながら二人一組で依頼と応答の練習をさせます。
|
応用練習 |
段階4.ロールプレイ
→インフォメーションギャップ(情報差)(1)を使った練習です。それぞれが自分に与えられたロールカード(2)の指示に従って会話を進めます。
お互いに相手に何が指示されているのか知らないので、相手の発話の内容を予想できません。従って、実際の会話に近い形で練習ができます。
++++++++++++++++++
ロールプレイに挑戦!
以下のようなロールカードを人数分用意します。
A: 生徒 日本語で作文を書きました。先生に見てもらいたいです。 |
B: 先生Aさんに何か頼まれます。答えてください。 |
@
生徒に2人組を作らせ、AとBを決めます。
A
それぞれにロールカードを1枚ずつ渡します。この時、生徒に相手のカードを見てはいけないこと、また手に自分のカードを見せてはいけないこと、カードの内容はお互いに秘密であることを注意しましょう。
B
生徒は、それぞれカードの内容に従って相手と会話します。
2人組での練習ができたら、発表させてみましょう。
|
(1)インフォメーションギャップ…話し手がもっている情報が聞き手が持っていない場合、また、話し手と聞き手のそれぞれが持っている情報が異なる場合など、両者の間に情報の差があること。
(2)ロールカード…以下にあるほう名、それぞれの役割(例えば、先生や生徒)や場面(何をするか)の提示が書いてある紙。
|
※ロールカードを人数分用意できない場合
印刷物をたくさん用意しなくてもいい、こんな方法もありますよ!
(1) AとBへの指示を書いた大きな紙を一枚ずつ準備する。
(2) Aは生徒でBは先生だということを説明した後で、まず、Bの生徒に目を閉じさせる(顔を伏せさせる)。
(3) Aの生徒だけに大きな紙に書いたAへの指示を静かに見せる(話したり声を出して読まないように注意)。
(4) 次は、反対にAの生徒に目を閉じさせ、Aの時と同じようにBに大きな紙の指示をみせる
(お互いの指示の内容は二人組みの相手には秘密にする)。
(5) AもBも顔を上げ、それぞれに指示に従って二人組みで会話の練習をする。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
他にも,もっといい方法やアイディアがあるはずです.教案を公開してもいいよ!という方,メールでぜひ教えてください!
chickpea@mx12.freecom.ne.jp
|